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「どこを見ている」
いつの間にか、紅い瞳へ向けたはずのシャベルは土にめり込んでいる。
男の躰は正面にはなく、横から頸を片手で掴まれていた。
「怯えなくていい」
荒く繰り返される呼吸が耳に煩わしい。
土にめり込んだシャベルに手を伸ばした土に塗れた手を男に捕らえられる。
踏み込んだ足が土を鳴らす。男からは声以外音というものが得られない。
男の手から逃れようと躰を捩った時、背を土に叩きつけられた。
咄嗟に後頭部を気遣ったが、肩胛骨を岩に強かにぶつけた。
「クッ」
頸をべろりと舐め上げられる。悪寒に背がぞくりと震える。
捲った袖から出た腕を撫でられ、スラックスの中に納まっているシャツの裾を引っ張り出される。
「何を…」
割り込んできた膝に股間を擦られる。
自由になった裾から手が這い込み、掌で撫でられる。腹から胸へ進み、胸の下で止まり、下りていく。
「何をするッ」
掴まれていない方の掌で男の肩を突いた。
見下ろしてくる男の唇が緩やかな弧を描いて笑んだ。見慣れない赤と金の髪の間から覗く紅い瞳がゆらりと艶めく。
頭の芯がぐらりと重くなるように、眩暈がした。
腹の上の掌が股間へ移り、一度撫で上げると、スラックスのフックが外され、ファスナが下ろされる。
チリチリ…。
どこか遠くの出来事のように、耳に膜がかかったように、鈍く聴こえる。
寛げられたスラックスを下着を除け、ペニスが頭を擡げる。薄らぼんやりする頭で勃起を認識し、少し驚いた。
剥き出しの勃起したペニスを掌で包まれ、膝が震えた。冷たい皮膚だった。
掌が上下する。冷たさが塗り込まれるようで、震えるような溜息が漏れた。掴まれたままの手首が冷え切り、痛みを感じるようになった。男の掌はずっと冷たい。
顔を横たえると、視界に黒い影のような塊が入った。ぞくりと背筋が震える。
「…あ、」
押し出されるように声が漏れた。とろりとペニスの先端から体液が漏れ出る。
瞼を閉じると、星が煌くような感覚が湧き出てくる。それが眼に見えるようにさえ感じられる。
男の指がペニスの括れを擦り、腰が揺れる。カサカサと葉擦れの音が耳を擽る。己の荒い呼吸さえ耳の粘膜を這った。
粘ついた体液が音を立て、グチャグチャだと思った。
ずるずると足許から何かが這い上がってくるのを感じる。自然に脚に力が籠もる。
「くぅ」
唇を噛み締めても小さく声が漏れ出てしまう。荒い息を抑えつける事が出来ない。
男が忙しなく掌を動かし続け、いきり立ったペニスの先の小さな窄まりから体液が迸った。びくんびくんとペニスが跳ねるのに合わせて白く濁った体液が飛び散り、幹に滴った。
「う…」
ザクッ… ザクッ…
ザクッ… ザクッ…
耳に侵入してきた耳障りな音に覚醒すると、まだ辺りは暗かった。男がシャベルで土を掘っている。湿った土の上に寝ていて背中や腕が冷たかった。
どさりと土を伴って、黒い大きな塊が落ちてきた。男がシャベルを使って落としたのだ。
男は気がついたように動きを止め、くすりと嗤う。紅い瞳が、艶めき、ぐらり、眩暈を感じる。
腹に膝に、土が落ちてくる。服の中に土が入らないかと少し心配になった。脚に土が降りかかり、靴下を伝ってスラックスの中に侵入する。
土が、腕に、胸に、頸に落ちてくる。シャツの襟から土が侵入して、鎖骨を擽った。ひやりとした感触に甘い痺れを感じる。
土が髪にかかり、遠い昔、母の温かい掌に優しく頭を撫でられた事をぼんやりと思い浮かべた。
顔に土が落ちて、鼻腔から土が侵入してくるのが解る。
最後に、うっすらと開かれた瞼の上に土が落ちてくる。視界が暗くなる前に一瞬だけ艶めく紅を見た。
すぅ、と一度息をゆっくり吐いた。
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