【 グッド・モーニング海馬編 】
 海馬くんは海馬コーポレーションの社長さんで、お仕事で毎日お疲れです。毎朝、目覚まし時計が鳴るまでぐっすりとお休みになります。

ピピピピピ……

「ん…。朝か」
 お目覚めになられた模様です。左腕をついて上半身を起こします。そこで海馬くんは気がついたのですが、何と、自らの左側には……あの忘れもしない赤い髪の――
「ゆ、遊戯!何故貴様がここにいる!?」
 そう、海馬くんの左隣には、武藤遊戯その人が眠っていたのでした。
「う…ん。あ…海馬。早いな。いつもこんな時間に起きるのか? 相棒ならもっ――
「何故! ここにいるのかと訊いている!!」
 遊戯くんが目覚まし時計を見ながら喋っているのを遮って、海馬くんは先程の問いを繰り返します。
「…フフ。元気だな。昨日はあんなに激しかったのに」
 一度ぽかんとした顔をしてから遊戯くんが微笑んで言うと、海馬くんは絶句してしまいました。
「……何だと」
「だから、昨日はあんなに激しかったのにお前は元気だなって」
「もう一度言ってみろ遊戯ぃ!!」
 とても迫力のある剣幕なのですが、ここは一つのベッドの上。一方の海馬くんは上半身を起こし、もう一方の遊戯くんは寝そべったまま海馬くんの恐ろしい顔を見つめているのです。何だか微笑ましくさえありませんか。
「…? 昨日はさすがにオレも疲れたぜ」
「遊戯! 一体いつオレが貴様と寝たというのだ!!」
 必死になって海馬くんは問います。
「…今の今まで?」
 きょとんとした顔をして遊戯くんが答えました。
「ふざけるな! …オ、オレは男と寝る趣味などないわぁ!!」
 気色ばんでいた海馬くんの顔が、心なしか青くなってきたような気がします。顔を青くして怒る人なのか、“顔面蒼白”というやつなのか……。
「海馬。さっきから何を言っているんだ? オレ達はここで寝てただろ?」
 さすがに海馬くんのただならぬ様子を不審に思って遊戯くんが上半身を起こしました。
「オレ…たち……? オレ、たち…たち……たち」
 いつかの海馬くんを彷彿とさせる台詞です。
「煩いぜ、海馬」
 遊戯くんがぽん、と海馬くんの股間に手を置いて言いました。
「昨日はあんなにデュエルして疲れてるっていうのに…まだしたいのか?」
 びくっ、と海馬くんの肩が震えました。
「…さ、触るなぁっ!! デュエルだと!? これ以上オレの躰に何かするというのなら射撃も辞さん!! 殺されたくなかったら今すぐここから出ていけ!!」
 何と海馬くん、枕の下からピストルを取り出して遊戯くんに照準を合わせました。
「な、何だよ急に。…泣くなよ、海馬」
 自分の方を向いた銃口の大きさに瞠目しながらも、青い瞳に涙を滲ませる海馬くんを哀れに思いました。
「今!! すぐにだ!!!!」
 何と恐ろしい!ジャキッ、と不吉な音を立てて安全装置が外されました。命令に従わなければ、遊戯くんは本当に撃たれてしまうでしょう。海馬くんの瞳は本気だと訴えかけてきます。
「解ったよ! 出ていくぜ、今すぐにな!!」


「ちぇっ。何だよ、海馬の奴。ちょっと朝起ちをからかってやろうと思っただけなのに…」
 遊戯くんはしぶしぶ海馬邸を後にし、もう一人の遊戯くんと家路についていました。ああ、海馬くんのベッドは何と心地が好かっただろうか……! 丁度好いスプリングに肌触りの好いシーツ。それに、二人で寝ても快適な広さ! 遊戯くんは海馬くんのベッドでの寝心地を思い出しつつ、柔らかなほっぺたを膨らませていました。
『海馬くん、何か勘違いしてるんじゃないかな…』
 心優しいもう一人の遊戯くんが、ぼそりと言いました。
「勘違い?」
 凛々しい眉毛をぴくりと動かして遊戯くんが訊ねました。
『うん。ボク達が…その、エ、エッチしちゃったとか、そんな風に思ったんじゃないかな?』
 もじもじと千年パズルを手で弄びながらもう一人の遊戯くんが言いました。柔らかなほっぺたがうっすらと赤く染まっています。
「オレ達が……?」
 遊戯くんは大きな瞳をぱちくりさせました。
『…うん』
「プッ。ハハハハハ!! …オレ達が、海馬と? 相棒、それ最高だぜ!!」
 一際大きく瞳を見開いたかと思いきや、遊戯くんは吹き出しました。
『…もう。そんなに笑わないでよ』
 自分が恥ずかしくなってきたのか、もう一人の遊戯くんのほっぺたが真っ赤になってしまいました。
「勝手に泊まっていっただけなのにな! それを海馬の奴…プ。ハハハハハ!!」
 心底可笑しいと言った様子で、遊戯くんはお腹を抑えて笑い続けています。
『もう一人のボク!』
 笑ったままの遊戯くんをもう一人の遊戯くんが窘めます。
「…ハハ、最高だぜ! 今日城之内君に会ったら最初に教えてやろう……くふふふ!」
『もう一人のボクってば!!』


―― グッド・モーニング、海馬くん!

●このお話は仮眠前に急に思いついたので、メモを携帯電話からPC宛てにメールで送りました。
●そうしたら携帯電話の奴、「かいばへん」と打ったら「海馬変」と変換してくれやがりました。
●眠たかったので少々いらつきましたが、中々ナイスな変換だと思います。
●今、IMが「ナイスな」を「ない砂」と変換してくれやがりました。死語だとでも言いたいのでしょうか?